個展紹介(還暦展)4回目(2001)
作品集のまえがき
私は幼い頃から、何をしても、のろまで、のみこみが悪く親や先生から不器用だと言われて育ちました。
書の習い始めも二十二歳と遅く、自分の仕事に自信のようなものが、芽生えたのは四十歳を過ぎてからです。
愚鈍でもよい、自分になりきって生きようと、教えてくれたのは 道元禅師です。休まずに、こつこつ修行するという意味を持つ「行持」を庵号に戴いたのもその頃でした。
長く書をやっていると、人為的になり過ぎて、糸がこんがらかるように、迷路に入ることがあります。そんな時「あれこれ考え過ぎなさんな。自然界はシンプルだよ」と聞こえてきそうです。
自然界の不思議さを敬虔な心で学び、筆技を超えた書を書きたい。人生の峠に立って願うことです。