
舞台は1600年前の中国南北朝時代、主人公の
鳩摩羅什(344~413)は父鳩摩炎と
亀慈国(きじこく)の国王の妹耆婆(ぎば)
との間に生まれました。亀慈国は北に天山山脈
南の崑崙山脈に囲まれたタリム盆地の北東、今の新疆ウイグル自治区のクチャというところ。
お母さんは 鳩摩羅什が言葉を覚え始めた頃から 子守唄代わりに経を唱えて聞かせたそうです。3歳の時には口に出して読むだけでなく、要点を抜き出して示し、師僧や母親を驚かせました。
「この子は人を救う天性の力がある」と見抜いた母は 甘やかされる亀慈国を離れて、二人で修行の旅にでました。その行程を地図を見ながら辿って行くと、
パミール高原を女人と幼児が本当に突破出来たのかと驚きます。
二十歳になって受戒、比丘(僧)になりました。「仏教を東方の地に伝えてほしい」と言う母の願いを聞き入れて、一人で行脚をはじめました。
当時の中国は 西晋王朝が滅びて、少数民族が群雄割拠する五胡十六国時代。
彼自身は政治情勢に左右されることなく、釈尊の教えを学び、広めていきましたが、名声が高まるばかりの鳩摩羅什を 各地の王は自分の国へ招こうと企てます。結果的には 後秦の王姚興(ようこう)に国師として迎えられ、梵語(サンスクリット語)を漢語に訳す大事業に取り掛かりました。「法華経」「般若経」「阿弥陀経」「中論」「大智度論」など従来からあったものを 原語から正確に改訳するものでしたから、内外の優秀な人材を集め、口訳、筆受、講義、対論と言う鳩摩羅什が考え出した方法で 最高の訳文を作る組織的大工場?を作ったのです。
最近の研究で サンスクリット原典と漢典の照合でわかったのが「色即是空空即是色」の8文字で表した個所は 原典にないもので、鳩摩羅什の心の自由の宣言だと言われています。
2017年2月18日(土) 雨水 旧暦 1月22日 NO80
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ひろみ (金曜日, 24 2月 2017 22:56)
これは実在した人物の話なのですね。
立松和平さんが 鳩摩羅什 に出会ったきっかけに興味あります。