「吾輩は犬である」

吾輩は犬である。今の主人が「フク」と名前をつけてくれた。吾輩の経歴は誰も知らない。

と言うのも年齢不詳(推定4歳)の成犬になってから、西の山に捨てられたのである。そして、この家に居ついて生きている。

始め「遺失物」として、亀山警察署に届けられた。近隣の警察に照会され、4ケ月経って正式に「松井家」の一員として犬籍を得た。

 

吾輩の主人は「書家」である。こちらから見ると いつもヒマそうに見えるが、時々車で外に出て「教授」しているらしい。家にいる時は 草刈りをしたり、木枝を剪定したり、仕事場に

籠って細々と何かやっていると思ったら、突然

大きな字を書いたりして「書家」らしい仕事もやっているのだ。

主人は「喜寿」を迎えて、何か悩んでいるらしいのだ。「55年間 書技を磨いてきたが、これでいいのだろうか?」書家は自分の言葉で書かなけばならない。内容を理解した上で 書かなければならない。若い頃は人の作った文章や漢詩や漢語を 何の疑いもなく書いていたが、これでは大衆からソッポを向かれるだろう。

一般の人が 書に親しみを持ってもらうにはどうしたらよいか。主人は今年も犬の絵が入った色紙を 知人に配っている。

 

2018年(平成30年)1月5日(金)小寒 旧暦 11月19日 NO101