
何気なくテレビを見ていたら「百年名家」の紹介で、久松真一の書が飛び込んで来ました。文字が軸の中に収まって空間把握されています。最近、スポーツの世界で耳にする「空間把握」は 書の世界でも大切なことなのです。
他の資料で久松真一の書を見ても「起承転結」の「転」から「結」への展開は、私が何枚も苦労して書いてやっと出来るのに 平然と書ける秘密は何だろうと考えてしまいました。
これを書いた久松真一(1889~1980)は岐阜県の長良に生まれ、晩年は同地で没しています。「久松真一記念館」(抱石庵)になっている自宅は24歳の時、建てたそうですが、趣味人のお父さんの影響で 日本建築の粋を如何なく発揮しています。
右の作品「無位真人」(むいのしんにん)<臨済録>あらゆる世俗の階級を離れた自由の世界に遊ぶ人のこと。
京都大学で西田幾太郎に仏教哲学を学び、西田から「抱石庵」の庵号を受けています。70歳ごろには ハイデッガーやユングなど世界の哲学者・思想家と交流し、東洋の哲学、文化の紹介に努めました。「京都大学学道道場」(FAS協会)を創立して、禅の修業を通じて人間の生き方を教えました。
今まで画家や陶芸家など一流の芸術家が書く書作品を見てきて 書を専門にする私達より遙かにレベルの高い作品を残しているのは何故でしょうか。
技術だけでない悟り、ひらめきと言った頭脳のメカニズムに秘密が有りそうです。
2018年10月23日(火) 霜降 旧暦 9月15日 NO120
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