横綱 稀勢の里引退

稀勢の里の引退のニュースが4日目の16日朝9時前に入って来ました。

32歳、茨城県牛久市出身、田子の浦部屋。平成17年初場所に新入幕、73場所目にして初優勝。

日本人横綱として期待されましたが、怪我で休場、

成績が残せず 横綱2年で引退しました。真面目な性格で この2年間苦悶の表情を見るにつけ、私の書道人生と重ね見て我が事のように胸が痛みました。

私の40歳前後の5年間は 作品は書けず、日展は落選続きでした。それでも良い書を書きたいと言う信念は変わらず「王羲之・十七帖」「遺偈・霊山道隠」「平復帖」「木簡残紙」自分が勉強したいと思う古典を敢えて 集中的に短期間で研究、創作し続けました。しかし、作品批評会では大先生から「松井は何を書きたいのや」と言われて頭の中は真っ白。何をやっても上手くいかず、ついに大阪駅前の街角に店をはっていた占い師に 占ってもらったら「貴方は稀に見る運勢の悪い人」と言うご託宣。ますます落ち込んで、苦しい胸中を先輩に告白したら「運勢が悪ければ 悪いなりに生きたらええやないか」この一言が私を救いました。

それから あらゆる本を読み漁りました。今読むと難解な宗教書もこの苦しい時期は理解出来たから不思議です。

この長いトンネルを抜けた後、霧が晴れたように書が解るようになったのです。「精神論では作品は書けない」と言う仲間がいましたが、「書道」「柔道」「剣道」「茶道」「相撲道」など「道」のつく世界に関わる人は 究極のところ「人間修行」ですから、その道を究めることが大切だと思います。

稀勢の里は 年寄り「荒磯」を襲名して後進の指導に当たるそうですが、

苦しんだ分、精神の深い所がわかる指導者になるに違いありません。

 

   2019年1月20日(日)大寒 旧暦 12月15日  NO126