陶器で養われた真贋見分け法

妹一家が墓参りのため、帰省しました。一緒にきた孫娘が 最近陶芸をやり始めて面白いと言う話に、懐かしい陶器の世界にひきもどされました。

50年前の書生時代には 色々な恩恵を受けましたが、書道とは縁のない陶器の真贋の見分け方を身に付けたことは 有り難いことでした。

食事やおやつの時間は 4畳半ほどの応接室で頂くのですが、そこの棚に栗原先生が愛蔵されていた李朝などの陶器が飾られていたのです。積極的に観察したわけでなく、日常的に視野に入っていただけなのに、美術館や街のショウウインドウで見る陶器と較べて その優劣が解るようになりました。理屈でない全く説明出来ない感覚的なものでしたが、解って来ると面白いもので よく大阪中の島の「東洋陶磁美術館」に通いました。

旅行のついでに立ち寄った窯場も 備前、砥部、益子等数多くあり、デパートで開催される陶器展は、許される限り観に行きました。その中でも特記すべきは

2011年三越百貨店で開催された薩摩焼「沈壽官展」です。とりわけ12代沈壽官の作品は印象深く 長く目に残りました。

熱狂的な陶芸ブームは ピークを過ぎたようですが、一般的に見て、陶器好きの

裾野を広げた功績はあるものの 真の味わいを感じる深さまでは啓蒙し得なかったのではないかと、思います。この事は書にも当てはまることで、作品の構図や筆技に重点を置いた展覧会方式が悪弊となって、心の有り様を表現すべき本来の姿の抑圧になっているように思います。

 

2019年(令和元年)10月24日(木)霜降 旧暦9月26日 NO144