守破離

「守破離」と言う言葉は、職人の世界や芸術の分野など

いろんな場面で用いられ、修行する人への心得に使われます。利休道歌の一つに「規矩作法、守り尽くして破るとも、離れるとても、本を忘れるな」とあります。

「守」は道を究めるにあたって、師の教えに従い、繰り返し学ぶことで、基本を身に付ける段階。「破」は学んだ

概念を打ち破り、試行錯誤を繰り返しながら、独創性を見出す段階。「離」は独自のセオリー(理論、学説、主義)を発見し、師の下を離れる段階。と言う注釈があります。

私が49歳の時です。「高山光大壺展」のポスターの

ロゴを書かせてもらった縁で、三重県立美術館ギャラリーで陶芸家の高山光さんに始めてお会いしました。

その時「松井さんは まだ先生に指導を受けておられるのですか」と不思議そうに尋ねられました。

書壇の常識では、途中で師匠の元を 離れるなど思いもよらぬことでしたから、

この素朴な質問に驚きました。しかし、他の美術界では、ある程度修行を積んだら「巣立つ」ことが 当たり前と言うことを始めて知ったのです。

それから4年後の1994年4月、思い切って師匠の元を離れました。師匠から離れることは「書壇」からの決別を意味します。また、書の探求の長い単独行の始まりでした。

そして今「破」の段階から「離」の入り口に差し掛かったところです。私の場合あのまま 書壇から離れなかったら、「破」止まりで その後の書道人生は無かったと思います。

 

2020年(令和2年)6月5日(金)芒種 旧暦閏4月14日 NO158