桂筆会展を見て

桂筆会展の案内を頂いて 三重県総合文化センターまで行ってきました。何も詳しいことは知らぬまま、旧知の堀田花さんの最近の市展に発表する作品にピカッと光るものが感じられて、その謎を探ろうと思ったのです。

花さんの先生は母上の高根桂祥さん、正筆会会長で日本芸術院会員の黒田賢一先生に師事されておられます。花さんも今年から黒田先生の直接指導を受けられるようになったそうです。妹の京子さんは線美を追求するジャンルで、アメリカで個展されたそうですが、文字通りの書道一家です。

会場に入って感じた事は 表装の装幀を表具店任せでなく、自分で探してきた模様紙を生地に使い、自宅の居間との調和をはかったり、自分で気に入った屏風を骨董品屋で見つけて来て作品に仕立てたり、日常生活と書を密着させようと言う意図が感じられます。

主宰の母上は自作の俳句を書いておられましたが、これからの書道は「人の書いた文学」(漢詩や詩歌)だけでなく、自分の思想、文学を書く方向に進むと思うと、時代に先んじて実践しておられるように思いました。

 

以下はメモ代わりに撮影した作品です。

正筆会初代会長の安東聖空先生(1893~1983)には 強烈な思い出があります。私が三十代の頃、全国に先駆けて朝日新聞が「カルチャーセンター」を開設、栗原蘆水先生が漢字部門を担当し、その助手としてフェスティバルホール前の朝日新聞社社屋で教えていました。その隣に安東聖空先生が指導する「仮名教室」がありました。先生が八十代の頃です。事務所職員の話では「多くの人材を育てた後、素人の門下生を教えることに意義がある」申されておられたそうです。大先生でありながら、初心を持ち続けられた先生の生き方に強い感銘を受けたものです。

「和の心を以って書き、点画の和、筆墨紙の和を求める」和道の精神は「正筆会」に脈々と伝わっているように思います。

 

 2021年(令和3年)10月8日(金)寒露 旧暦9月3日 NO190