美術の秋・揮毫の秋

急に寒くなりました。あの暑い夏の季節には 字を書く事も家の雑用もやる気が起こりませんでしたが、涼しくなった途端、体内の細胞が疼き出して揮毫したり 庭木の剪定をしたり活動的になりました。不思議です。

秋は空気が澄んで 川の水の流れが聞こえて来たり、月が冴えて見えます。詩歌の世界もその辺の状景を多く詠んでいます。

俳句「秋蒔や陽を混ぜて土ふくらます」(田山康子)。この時期、畑を耕して種まきをする風景が見られます。太陽の暖かい光を土に混ぜているのだと思うと、お百姓の丁寧な野菜作りは 自然の恵みを身を挺して受け取っているのです。

俳句「物いへば唇寒し秋の風」(松尾芭蕉)。この句の前書きに「人の短をいふことなかれ、己が長をとく事なかれ」とあって、座右の銘として芭蕉庵に貼ってあったそうです。

「仁義以利人、忠信以道之」(呂氏春秋<りょししゅんじゅう>)呂覧<りょらん>とも言いますが、秦の呂不偉が共同編纂した書物、紀元前239年に完成)

「仁義によって人を利(益)し、忠義(誠実)によって人を道<みちび>く。

月出山疑雪、夜涼天易成秋」(周鼎)

「月が出ると雪が降ったかと疑い、夜の気は涼しく秋の訪れは早い」。

「夜靜溪聲近、庭寒月色深」(厳維)。

「静かな夜 渓流の音が近くに聞こえる、寒気が漂う庭には月の色が深い」

「雲浄江空處、無人月自高」(黄景仁)。

「雲晴れて目を遮る物がない川(江)のほとり、人影もなく月だけが高く冴えている」

 

今夜は満月から数えて4日目、昔の人はこれを「居待ち月」と言って愛でたそうです。我が家の南の廊下から見る風景は 樹木の葉を落とし、向こうの山並みは紅葉が始まっています。

 

2021年(令和3年)10月23日(土)霜降 旧暦9月18日 NO191