
寅年の始まりです。元旦の朝、積雪が30㎝もある田んぼのあぜ道を通って、初のウォーキングに出かけました。
雪の正月は外出する気にもならず、家に籠って収録していた番組を視ることにしました。
山中伸弥・羽仁進・立花隆・向田邦子などの各氏の番組は何回見ても見ごたえのあるものです。
その中でも羽仁進さん(1928~)の「教室の子供たち」や「絵を描く子供たち」「不良少年」は撮影手法が他の映画とまるで違う。誰もがやったことの無い方法でカメラを回しています。当時の脚本が残っていますが、職業俳優は使わないとか、演技指導はしないとか あるがまゝの自然体が基本です。
1961年の「不良少年」は刑務所内の撮影が許されず、刑務所から出てきたばかりの少年たちを集めて、撮影が始まりました。おおよそのストーリーは決めていたそうですが、少年たちが所内で経験したことを 監督に教えに来る。それをヒントに映画の中に取り入れる。言わば、羽仁さんと少年たちとの合作映画だと言います。元不良少年の1人 中野一夫さん80歳は「地のまゝでやってくれ」と言われたそうです。この年のギネマ旬報日本映画ベスト・テンで、黒澤明の「用心棒」を押さえて堂々の第一位です。
どうして子供達が自然に振る舞う映像が撮れたのか、世界の映画人が注目したそうですが、「練習(リハーサル)のない劇映画をとる」手法は、瞬間の面白さを切り取って見せてくれます。書作の魅力が 練習のない一枚切りの本番が最高だと言われるのと一緒です。
「教室の子供たち」(1954)は東京・墨田区鐘ヶ淵の旧隅田小学校が舞台。
出演した子供たちは今も健在です。66年ぶりに皆が集まって上映会が開かれました。昔の子供たちと現在の老人が同じ人間なのに、どちらも目がキラキラして 純粋なのが不思議です。多分作らない、虚でない自然のままの人間はいつまでも美しいのだと思いました。
2022年(令和4年)1月5日(水)小寒 旧暦11月22日 NO196
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