感性の波

早や立冬。小春日和の気候が続いて心地よいひとときを送っています。しかし、今年の夏の暑さは 半端なものでなく、その証拠に例年なら鈴なりになっていた庭のレモンがひとつも実をつけていません。知り合いの人は熱中症にかかって、その後体力を落としています。草木も人間も受難の時です。世界的にはモロッコやスペインは旱魃にあって、地球温暖化防止が急務なのに、他人事のようにみんな無関心です。

昨日の日曜日は 色紙書きに明け暮れました。

と言っても20枚ほどしか書けませんが、その時、「感性の波」と言うのがあるんだなと感じました。冴えている時は 線が面白いように決まるのに、頭がどんよりしていると、余程気を付けないと 思った所へ筆が伸びてくれない。

日によって感性の波は違うと思いました。

毎年干支の色紙を書くこの時だけに 経験することですが、始めぎこちなくても気持ちが乗って来るとある種の恍惚感を味わう。

私が筆で絵を描きはじめたのは1983年頃。表具師の故濱野武臣さんから頼まれて「軸の縁起」(上の写真)を書いた時。

始めはちょっとした手慰みでしたが、書道の筆技の補助的な役目をしていることに気付きました。微妙な線の切れ味もそうですが、これから書く対象の絵の全体像を 目の隅っこで把握して置いて カタチを作っていく。全く書の作品の作り方と手順が同じなのです。雑用をしている時でも 同じ事が言えます。

現代の日本画には 余り見かけませんが、伊東深水や加山又造のような画家の線に憧れ、その作品の前に立つと美の極致に触れたものです。

本職は書家だと言い訳しながら、筆で絵を描く余技に浸っている今日この頃です。

 

2022年(令和4年)11月7日(月)立冬 旧暦10月14日 NO215