棟方志功展を見て思ったこと

コロナで遠出を我慢していましたが、久しぶりで「棟方志功」展を見ました。

場所は昨年5月27日に106歳で亡くなられた小嶋千鶴子さんが私費で2003年に開設された「パラミタミュージアム」。自宅から車で40分、気軽に行ける美術館です。

流通大手「イオン」の創業者岡田卓也さんとは10歳違いの姉で、両親や肉親に早く死なれて、呉服屋「岡田屋」を切り盛りした剛腕は有名です。

一方、鑑識眼も並外れていて夫小嶋三郎一さんと内外の美術品を収集して、三重県立美術館の開設の時は「シャガール」(一億円相当)を寄贈。美術に関わる我々に有象無象の恩恵を残して頂きました。大感謝です。

私は6年前に同館を訪れて、2017年7月23日のホームページ「棟方志功とシンギュラリティ」にその時の感想を書いています。

改めて思う事は 小嶋千鶴子さんの好む作風は 夫三郎一さんが師事した「須田剋太」や今回の「棟方志功」のような豪胆なものが多く、私が育てられた書壇とは相容れないものがあります。

思い出す事があります。「書家の書は残らない」と言った人は 53年前たった30分の面談ですれ違った人。国鉄神戸車掌区で新しく赴任してこられた新区長笠原浩さん(2005年没)。辞めていく私への餞別の言葉でした。その後、終生文通で私の仕事を見守ってくれました。芸術の何たるかを知る教養人でした。

 

棟方志功や井上有一や相田みつをのような一見稚拙な書が残り、村上三島先生や青山杉雨先生の書は残らない。何処に原因があるのだろうか、長い間考えています。今の段階でひとつ言えることは 技術至上主義の書壇の方針と 何が言いたいのかと言う思想表現の芸術家たちの違いだと言う事です。

棟方志功の作品は 忘れていた若い頃の志を思い出させてくれたのです。

 

 2023年(令和5年)4月20日(木)穀雨 旧暦3月1日 NO226